ごあいさつ

東京慈恵会医科大学解剖学講座は、明治24年(1891年)に創設され、130年以上の歴史を誇る伝統ある教室です。本講座では、医学の基盤である人体の構造と機能の理解を深めることを目的とし、教育・研究に取り組んでいます。

医学部学生を対象に、人体解剖学、神経解剖学、組織学、人体発生学の講義・実習を通じて、医学の根幹を支える知識の習得を支援するとともに、生命の尊厳を理解し、医療人としての倫理観や感受性を育むことを重視しています。解剖学の学びは単に人体の構造を知ることにとどまらず、亡くなられた方々のご厚意によってこの貴重な機会を得ていることを深く受け止め、医療者としての責任と謙虚さを培うことにもつながります。

また、脳を含む正常人体の形態と機能に関する研究を基盤とし、各種実験動物を用いた病態解析研究を通じて、医学の発展に寄与しています。学部生および大学院生に対しても、研究の基礎から応用までを指導し、次世代の医学研究を担う人材の育成にも力を注いでいます。

当講座は、篤志献体の会である「慈恵白菊会」を運営し、献体を用いた教育活動を展開しています。解剖実習を通じて、医学生が医師としての第一歩を踏み出すための心構えを学び、また、医師に対する外科手術手技研修の支援を行うことで、より高度な医療技術の習得を促進しています。これらの活動を通じて、本邦の医学教育・研究、さらには医療の発展に貢献することを使命としています。

日本解剖学会においても長年にわたり貢献してきました。昭和11年には第44回日本解剖学会を森田齋次教授が、昭和34年には第64回日本解剖学会を新井正治教授が会頭として務めました。そして、2026年3月には、第131回日本解剖学会総会・全国学術集会の会頭を務めることとなりました。この歴史ある学会を通じて、解剖学のさらなる発展と、次世代の医学研究の推進に寄与できることを光栄に思います。

医学の進歩には、人体の構造を理解する解剖学の知見が不可欠です。私たちは、教育・研究・医療の架け橋となるべく、解剖学の重要性を広め、次世代の医学・医療を担う人材育成に尽力してまいります。東京慈恵会医科大学解剖学講座は、これからも新たな知の創造と医学の発展に貢献し続けます。

東京慈恵会医科大学 解剖学講座
統括責任者 岡部 正隆